都市の中のシンプルな開放空間のある住宅|一軒家・自宅
独立して間もない頃 デザイナーの友人からの紹介でN様ご夫婦と会った。
歳はお二人とも30代前半でご主人は服飾デザイナーとしてD社へ勤めていた。
土地購入後に海外出張が決まったそうで建築計画はかなりの強硬スケジュール…さらに主だったご要望を考慮すると相当コストに苦しみそうだった。
何度かお打合せするうちに結論づけたのは「海外出張から帰ってきてから完成させる」ということだった。
出張中は知人に貸すことで家に稼いでもらう。
例えば一期工事が1500万円だとすれば、三年で出張から戻ってきたときに500万円の資金が出来ている、これを二期工事の費用に充てれば、2000万円の家となる。
そう割り切って、或る程度大胆な減額案を選択しながら、ご要望をほぼクリアしつつ、予算内に納めることができた。
敷地は、目黒区中町の閑静な住宅街、4棟分譲地の奥。 建築計画で最も大事にしたのは陽の光。ただでさえ奥地なので窓を開けても隣の壁が見える。
そんな窓をつくってもちっとも明るくないし、気持ちよくもない。
そこで、隣地状況を考えて、光が一番入ってくる箇所に窓を開けていく。その光をもれなく人の集まる部屋へ導くために今度は床にも穴をあけていく。日時計の様に陽が駆け回っっていくような、一日中気持ちのよい活発な空間となる様心がけた。
また、狭小の部類に入るので縦のつながりも大事に出来る様心がけた。一つの空間の周囲を渦巻く様な動線と、その中央のたまり。住まい手が生活していく中で、色々な場所で動いたり留まったりしてみて、気持ちのよい場所を見つけてもらえると嬉しい。
リビングにソファを用意しなければ落ち着かない、そんな家ではつまらない。廊下という概念は出来るだけなくし、どんなところにだって留まれる、逆にそれが気持ちがいい….そういう空間を目指した。
最後に、三年後、施主が戻られたときの構想は実はもうすでに頭の中にはある。
ただ、それがいい意味で寝かされて、さらなる良いものを、また一緒に喧々諤々と創り上げられれば、設計冥利につきる。
概要 | |
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作品名 | 油面の家 |
ジャンル | 一軒家 , 自宅 |
所在地 | 東京都目黒区 |
間取り | 2LDK |
基礎 | ベタ基礎 |
外壁 | ガルバリウム鋼板 |
屋根の形 | 切り妻屋根 |
壁 | クロス貼 |
床 | 無垢杉板 |
構造 | 木造在来 |
延床面積 | 81.78㎡ |
ロケーション | 旗竿敷地 |
設計から完成までの期間 | 9ヶ月 |
予算帯 | 1,500万円 |