災害に強い住まいとは?地盤と災害

住まいと安全とお金
災害に強い住まいとは?--「地盤」を考えない住まいは、まさに"砂上の楼閣"

連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。

地盤と災害~地盤を考えない住まいは、まさに砂上の楼閣そのもの~

東日本大震災では海岸部の埋め立て地域を中心に、液状化現象により多くの住宅が傾きました。日本の住まいの平均耐用年数は30年に満たないものでしたが、建物の性能も向上し、これからは環境保全の面からも100年以上は優に使い続ける時代です。しかし建物を据付ける基盤となる地面の強さは、それこそ地域やその敷地で千差万別です。

本来は硬い地盤の敷地であっても一度掘り起こしていれば、元の固さには戻りません。過去の遺跡が掘り起こせるのは、柱などのために掘った穴の部分が柔らかいからです。昔と違って現在の住まいは重装備です。家具や調度品どれをとっても、以前の日本の住まいにはなかったものばかりでしょう。今まで大丈夫だからと言って建替え後も地盤補強無しで大丈夫とは限りません。

表面の地面の強度が弱くても、杭などでその下にある固い地盤に直接建物が支持されていれば、液状化になっても建物は傾くことはありません。杭の他に表層の土を固めて強くする方法、基礎が地面に接する面積を広くする方法など、地盤の強さや土壌の性質に合わせて対処する方法はいろいろあります。

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地盤補強→基礎→構造体→仕上げ材→家具・調度…と、完成したら見えなくなる部分、工事の最初の部分、構造の強度に対してより基本的部分からお金を配分していくと、砂上の楼閣とならず災害に強い住まいとなります。建物本体の強度についても、この連載の第1回で述べたように、現在の基準は一定範囲の地震に対応するものでしかありません。コストはかかりますが、建築基準法で定められた基準を超える強度で設計すれば、より安心に違いないのです。

住まいの水害対策~治水対策は永遠の課題~

つい最近、面白い本を発見しました。『日本史の謎は「地形」で解ける』(竹村公太郎著、PHP文庫)で、冒頭の第一章は徳川家康が関が原の戦いに勝利した後、政治の中心であった京に残らずに、なぜ遥か離れた当時未開の土地であった江戸に戻ったか…という疑問に地形をもとに解き明かすものでした。

遡ること10年余り、豊臣秀吉の命に従って江戸に下った家康は関が原の戦いまでの期間何をしていたかというと、ひたすら関東平野をみて回ったそうです。そして土地の改造に密かに取組んでいたそうで、関が原の戦いで中断したものの、終わるや否や早々に取って返して工事を再開し、利根川を今の位置に付け換えていったそうです。その結果、単なる未開の沼地が途方もない肥沃で広大な関東平野に大変身し、近年もその恩恵を受け、関東平野を舞台に近代工業が発展し、現在の日本の地位を築いたとあり、家康こそ最大の国土プランナーだったと述べています。

近年の政府もそれを受け継ぎ、堤防を嵩上げし、放水路を造り、治水政策に取組んできました。400年を越えて営々と作り上げてきた結果を軽く考えることはできません。それでもなお、人工の堤防が自然の猛威に対していかに脆弱かは、東日本大震災で経験したばかりです。旧江戸川(家康により付け換えられた旧利根川)の堤防をよく自転車で走ることがありますが、川面と住宅地を交互に眺めるといろいろ考えさせられます。

水害が想定される地域の場合は、住まいは流されない堅固な構造として、想定浸水面より上の階があることが最低条件です。さらに塔屋やタラップなどで屋上に避難できるようにすると、生命が危険にさらされるリスクはその分軽減できます。

災害リスクはゼロにはできない~ソフトの工夫で性能が生かせる災害に強い住まい~

住まいを強固な構造にしたとしても、それを超える自然の猛威にはかないません。東日本大震災の津波は病院の5階にまでも浸水しています。建築基準法上3階までしか建てられない場合はどうすればよいでしょうか。ひとつは前項に述べたように屋上などを利用し、できるだけハード面で対処した後は、ソフト面の対策を図ります。塔屋などに食糧や水・毛布のほかに家族分のライフジャケットなどをストックして置くと良いでしょう。

新築する時に、これらの非常用グッズをストックするスペースの工夫もしておいて下さい。水に浮く避難カブセルなども開発されています。リスクは完全にゼロにすることはできません。ありとあらゆるところを工夫・改善し、少しずつリスクを少なくするしかないのです。また近所の中高層マンションの住民と、避難の受け入れを約束しておくとよいでしょう。最近のマンションはほとんどオートロックになっています。極近隣の親しくしているお宅をいくつか用意しておいて、万一の場合は非難できるように日頃から相談しておく事が肝要です。我が家は9階ですが、2階の方を受け入れる約束をしています。

実はこのソフト面を日頃から意識して準備おくことが、実際の災害に大きな力となります。連載第2回で述べた「釜石の奇跡」の事例をみても、ソフト面の工夫と日頃からの準備がいかに重要で効果的かが分かります。たとえ堅固な住まいを建てたとしても、いざというときの判断を間違えると命の危険にさらされかねません。

しっかりした住まいを建てて災害に備え、かつソフトの対策に万全を図って初めて、ハードの構造・設備の性能が生きてくるのです。連載第1回で述べたように、災害には地震、津波や河川の氾濫、火事など、様々あります。安全で堅固な住まいは安心のために骨格であり、様々なソフトの肉付けが必要なのです。

(※画像は本文とは関係ありません)

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<著者プロフィール>
佐藤 章子
一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

この記事はマイナビニュースより転載しています

プロフィール

東恩納 尚縁

将来の夢は孫と一緒に暮らすこと。

孫ができた為、将来は娘夫婦と二世帯住宅の夢を持っています。
「住まい」について考えたコラムを寄稿しています。

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