松原/脳神経外科「うえだクリニック」‐3‐必ず勝つ



 前回まで、医院の場所を南大阪と書いてきました。

 移転をまだ公式にアナウンスする前だったからですが、晴れてその環境を説明できます。



 近鉄、河内松原駅から北に商店街が伸びています。



 この商店街は中高野街道で、守口と高野街道を結ぶ南北の主要街道でした。

 駅から40m程北上すると、東西を走る長尾街道にぶつかります。

 交差点には「阿保(あお)茶屋跡」の石碑があり、当時からの賑わいを知ることができるのです。



 この長尾街道を西に200m程進むと国道309号線(内環状線)にぶつかります。

 この交差点が「松原警察西」。



 桜の御紋が輝いていますが、近くに警察があるのは、治安面においては何とも心強いもの。



 その「松原警察西」と「阿保茶屋跡」の中央あたりに、現「うえだクリニック」はあります。

 この長尾街道は、現在もよく整備されており、非常に人通りの多い生活道路なのです。



 うえだクリニックの一番の特徴は、MRIやCTなどの最新設備を使った、脳神経外科の専門性です。

 この日も多くの自転車とまっており、時折のぞく待合室は一杯でした。

 より高度な診療機器を導入し、より快適な待合を備えたクリニックにしたい、という院長の動機がこの計画の推進力になりました。



 新敷地は、現クリニックから約60m東に行ったところ。

 院長は、以前近くの総合病院に勤めていましたが、この活気ある長尾街道がともて気に入っていたと言います。

 私も何度か足を運びましたが「ここはベトナム?」と言いたくなるほどなのです。



 警察の前から、クリニックの前まで渋滞が連なることもしばしば。

 広い歩道は、ひっきりなりに人が行き交います。



 現場は基礎が立ちあがり、いよいよ建方を待つ状態になりました。



 その前に、埋設配管を埋める作業が続いていました。



 現在も繁盛医院ですから、新しいクリニックを設計する私としてはプレッシャーも感じます。

 クリニックの専門性、人柄、活気ある環境、そして最新の医療設備。更にクリニックは大きく、新しくなります。

 これで発展がなければ間違いなく私の責任です。

 長らくこの仕事をしてきましたが、「必ず勝つ」と決めています。

 建築はかなりの金額が掛かりますし、やり直しはほぼ出来ません。よって、負けることなど許されるはずもありません。

 その時に、一番大切なことはやはり「人」だという結論に至りました。

 建築家・高松伸さんも「建築家にとって最も大切なものはクライアント」と言われていました。

 私に友達は居ませんが、クライアントには大変恵まれているのです。

文責:守谷 昌紀 (続きを読む)


「住吉区歯科医師会館」‐8‐そして開館


 昨年の2月にスタートしたこの計画も、ようやく引渡しを迎えました。



 エントランス上のロゴも入りましたが、今週末にはお披露目の公演会が開催されます。



 「虫歯の鳥などいないのでは」という多少コミカルなコンセプトでプレゼンテーションをしました。

 14社のコンペと聞いていましたが、他社のことを気にしていても仕方がありません。

 歯科医師会から選ばれた「会館建設委員会」のみなさんはすんなりと受け入れてくれました。

 そういう意味では、正面にあるくちばし状の庇は、この館を誕生させてくれた原動力でもあるのです。



 建築は機能を持っています。

 機能あるものを少しでも美しくすることだけが、私の使命です。

 階段は特に集中してデザイン、監理をしました。



 委員会のある方が、この景色を見て「教会みたいだね」と言ってくれました。

 創り手としてはとても嬉しいコメントなのです。




 作家のmarianeさんと苦労して取りつけた作品は、大会議室の右奥にあります。



 この場所に導かれてきたかのように、ピタリと納まっています。



 光はその場所を神聖なものにしてくれる力を持っているのです。



 作品には銀箔が貼られているところがあります。

 その部分が、光の変化を刻々と映します。

 そういう意味でも自然光が照らすこの場所を、大変気にいってくれました。



 ホールから2階に上がるとオフィスフロアになっています。



 ガラスの手摺は、2階からの光を遮りません。



 最も階段寄りにあるのが会長室兼応接室。



 そして光庭を囲むように、事務所、小会議室が並びます。



 4月10日(火)午後8時からのプレゼンテーション時に提出したパースです。

 そのパースと寸分違わずとは言いませんが、軸はぶれていないと思います。



 むしろ、実物の方が美しいかもしれませんと言えば、厚かましいでしょうか。

 100名近い歯科医師が在籍する歯科医師会ですので、全員の方々が喜んで下さるかは分かりません。

 同じクライアントと2度仕事をすることは極めて稀なこの仕事において、一期一会の精神で取り組んできたつもりではあります。

 創り続けることだけが私の仕事です。

 イノベーション等の言葉とは程遠い、この原始的な仕事がやはり好きなんだと改めて思うのです。



文責:守谷 昌紀 (続きを読む)


「住吉区歯科医師会館」‐7‐開館間近


 ゴールデンウィーク前は、くちばしの上唇が出来上がったところでした。

 その後も現場は動いており、ようやく下唇も揃いました。



 たかが庇、されど庇です。

 建築においてのデザインとは、ただの装飾であってはならないと思っています。

 必要なものを、「美」へと高める行為だと解釈しているのです。



 外構工事は残っているものの、その全体像を現してくれました。

 エントランスの扉が入り、その抜け感がよりはっきり分かります。

 「模型通りに仕上がったな」はよくありますが、「模型よりいいな」と思うことは稀です。

 手前味噌かもしれませんが、この建物は後者だと感じていました。



 エントランスホールを入ると階段があります。



 その右手に、青をテーマとした男子WC。



 反対側には、赤をテーマとした女子WC。

 当たり前の配色と言えばそうですが、床と奥の壁を統一することで、無垢感がでればと考えました。



 2階にある共用WCは間をとって黄緑です。



 大会議室から階段を見返すと、大きなガラスの開口を中央に切ってあります。

 大会議室なので、不透明のフィルムを貼る予定でした。

 ですが、あまりにもマッチしているので、医師会の皆さんに、ブラインドを取り付けるという方法を提案してみようと思っています。



 一番奥のトップライトはまだ覆いがついているので、手前2ヵ所から光が落ちています。

 かなり迷った床の色合いも、これで良かったと確信がもてたのです。



 工事も終盤、美装に2人の職人が入ってくれていました。



 ピカピカの状態で、引渡したいとの思いは、私達も現場も同じなのです。



 昨年の2月にスタートしたこの計画も、残すところ1週間となりました。

 来週、2階のガラス手摺がとりつけられ、大会議室の絵画が飾られると、全てが完成です。

 名残惜しくも、楽しみでならないのです。



文責:守谷 昌紀 (続きを読む)


朝テンションがあがる「北摂のリノベーション」‐4‐旅の一座の現場公演



 ゴールデンウィークの「元」中日。

 北摂の現場へ向かいます。



 大阪市内は殆ど渋滞なしでした。



 現場近くにある田んぼの畝にも野花が咲いています。



 ゴールデンウィークと言うくらいですから、本当に気持ちの良い季節になりました。



 現場は既存瓦の撤去が終わり、大屋根のルーフィング(防水紙)が貼り終わりました。



 瓦屋根の撤去工事が、なかなかに難航していると聞いていました。

 まさに下屋はその最中で、職人がヘラで瓦を固定していた土をそぎ落としています。



 下地は木材を薄くそいだもので、「トントン」というそう。

 檜皮の簡易版といったところでしょうか。初めて実物を見ました。

 この建物は築30年。私がこの世界に入ってから25年なので、わずかにタイムラグがあります。

 リノベーションとは真に生きた教材なのです。



 土をそぐ作業が終わると、垂木を通し、その間に断熱材を入れていきます。

 断熱材より僅かに垂木のほうが厚く、その隙間が通気層になります。

 夏は暑い空気を上に排出、冬は冷たい空気を下に流すことで、より断熱効果を高めるのです。



 2階には、その断熱材がすでに準備されていました。



 打合せの日は少し早めに現場へ行きます。



 打合せ時に使うサンプル、図面などを用意するのですが、何事も準備が全てです。

 公共工事等では、現場事務所が設置されますが、住宅ではない事が殆ど。

 よって、現場の一角を借りて、即席現場事務所とするのです。



 この日も、現場が用意してくれたベニアの机と、断熱材のソファで5時間程打合せをしました。

 クライアントは名古屋在住で、ゴールデンウィーク対策に車ではなく新幹線で来阪してくれました。

 時間もお金も掛けて足を運んで貰うことになります。

 よって、その時間の価値を最大にする努力をしなければなりません。

 しかし、資料に間違いがあったり、抜けがあったりで……

 全て私の責任ですが、あまりも頭に来てしまい、打合せ中に若いスタッフを叱ってしまいました。

 クライアントには不愉快な思いをさせてしまったのですが、鉄は熱いうちに打てと言います。

 間違いたてでなければ打ったとしても、意味がないとも思っているのです。

 現場を舞台とするなら、打合せは旅芸人の公演のようなものです。

 何とか楽しんで貰えるよう、旅の一座は腕を磨かなければなりません。

 本番の舞台でなければ身に付かないところも、旅芸人そっくりだと思っているのです。

文責:守谷 昌紀

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脳神経外科「Uクリニック」‐2‐小さなトップライト2つ



 暑い、熱い4月後半になりました。



 現場では、型枠大工が3名。

 汗を流しながら基礎の立ち上がり部を組み上げています。



 親方は50歳中頃でしょうか。

 若者2人を含めて3名のチームですが、1人はもしかすると10代かもしれません。

 若者の現場離れが進む中、1人でも居てくれると嬉しいですし、一声掛けたくなります。

 「是非またウチの現場にきてよ」と伝えました。



 当然ですが、建物は地面に近いところからでき上がって行きます。

 スポーツでも足腰が大切なように、基礎がしっかりしていなければ、地震に耐えられるはずもありません。

 整理整頓がされた現場に、悪い仕事があることはないのです。



 基礎を見れば、敷地一杯だということと、細かい間仕切壁が沢山あることが分かります。



 クリニックという性格上、多くの機能=部屋が必要になってくるのです。

 その中でも、中枢部であり、かつ司令塔となるのが診察室です。

 経験上ですが、院長は自らの診察に適した空間の大きさをよく把握しています。

 かなりの時間をこの空間で働くので、少し大きめの、ゆったりとした空間を提案するのですが、ジャストサイズを指示して貰うことが殆ど。

 人気のクリニックなら、ナースがテキパキと動いている姿を思い浮かべることが出来ると思います。

 無用に大きい空間では、動きに無駄がでてしまい、診察の質が落ちてしまいかねないのです。

 その空間を少しでも快適にしたいと思い、ある提案をしてみました。

 反対に、待合室はゆったりと大きく確保しています。



 南面のもっともよいエリアを贅沢に使い、吹抜けとしました。

 高い位置にある正面のルーバー越しに、かつ側面から、柔らかい光を取り込むことに注力しています。



 2つある診察室には、小さなトップライトを提案しました。

 模型を俯瞰した写真が分かりやすいでしょうか。

 様々な患者さんが来院するので、明るすぎるのも問題となりえます。

 よって、その光を止めれるような機能を持たせ、望遠鏡のような長いストロークをとりました。

 これによって、より間接光に近いものとなるのです。

 地域の皆さんに長く愛される医院を目指します。

 その為にはここで働く皆さんに、この建物、この空間を好きになって貰わなければなりません。

 そんな大それたことが出来るのかは分かりません。

 それでも目指さなければ、現実となることはないはずです。

 この小さなトップライト2つに、創り手としての気持ちを込めたつもりなのです。。

文責:守谷 昌紀




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朝テンションがあがる「北摂のリノベーション」‐3‐屋根が主役



 昨年の北摂エリアは、地震、豪雨、に台風と厳しい天災が続きました。

 こちらのお家も震災で棟瓦が少しずれ、知り合いの建築会社がブルーシートを掛けてくれたそうです。



 瓦屋根は、葺き替えがしやすく、自然に優しい材でもあります。

 問題が起った部分だけをやり替えれば良い点は、他の材に無い特徴と言えます。

 一昔前なら、少し器用な人は、自分でメンテナンスしていたでしょう。

 焼き物である重さは、台風に対しては優れていますが、地震に対して優れているとは言い難いのが一番の課題でしょうか。



 近くに見える古い民家は、鋼板屋根に変わっていますが、茅葺きの上を覆ったのではと想像します。

 この勾配で瓦で葺くことはほぼないからです。



 この計画でも、瓦屋根を葺き替えるかは、最後の最後までクライアントも悩んでいました。

 コスト面が大きかったのですが、最終的に葺き替えという方向に決まりました。



 2階には屋根上に敷く断熱材が準備されています。

 断熱材の上に通気層をとるのですが、雨を止めると共に、断熱も屋根まわりに求められる重要な機能です。



 長らく大屋根を支えてきた棟束には「への六棟」とあるのでしょうか。

 昔の大工は、通りを「いろはにほへと」で表しました。



 重い瓦屋根を支えてきた丸太の小屋梁です。

 水平に墨が打たれており「三寸上り」とあります。

 建築において、水平、垂直が常に基本となるのです。



 瓦の撤去中で、バラ板の隙間から光が差しています。



 ブルーシートを透過した青い光をステンドグラスのようと言えば過ぎるでしょうか。

 しかし、この強い光を止めるのも屋根の役割なのです。



 解体撤去が進む中、鬼瓦が置いてありました。監督も「立派なので捨てにくかったのでは」と。

 折角葺き替えをさせて貰うことになったので、安全、断熱、遮熱、そして美しさを備えた屋根にしたいと思います。

 雨、風、光を最前線で食い止めているのが屋根です。

 この計画に置いては、ロケーションも含めて、屋根が主役になりえると思っているのです。

文責:守谷 昌紀


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脳神経外科「Uクリニック」‐1‐プロローグ



 南大阪の幹線道路北側に「Uクリニック」の計画地はある。



 間口は15m程あり、日当たりもよい。

 全面道路はひっきりなしに車が往来し、駅が近いこともあって、自転車、歩行者も多い。大変に活気のある通りだ。

 3月末、土地の掘削から工事がスタートした。



 この地に木造2階建ての、クリニックを新築するのだが、本クリニックは脳神経外科・内科が標榜されている。

 院長はドイツ留学などを経て、その職能を研鑽してきた。脳に対しての高い専門性が一番の特徴である。

 設備においての特徴は、CT、レントゲン等とともに、最新鋭のMRIを備えていることだ。

 MRIは、磁石による強い磁波と電波を使って、体の断面映像を撮影するので、被ばくがなく体に優しい医療機器なのである。

 最新鋭の医療機器を導入するために、キュービクルという小さな変電所も敷地内に設ける必要がある。

 建物のコンセプトは回を改めようと思ったのは、現場を視察したからだ。

 良い診療をするためには、最先端の医療機器も必要だし、広い待合も欲しい。

 法が許容する最大の建物を計画することになり、工事車両を止める余白もない。



 しかし、建物西側にはキュービクル置場がある。

 それもギリギリで計画したのだが、職人はここに工事車両を停めるという。



 後輪の半分は、空中を通過しながらも見事に納まった。



 これも日々の研鑽の成果と言える。



 西も北も境界ギリギリ。



 東の奥もギリギリ。



 道路側もギリギリ。



 何もかもギリギリだが、数センチの精度で、ユンボを操る様を見るのはとても楽しい。

 実業の誇らしさを感じる瞬間だ。

 昨年だったか、ある映画監督がITを「虚業」と表現した。それに対し、ITの寵児が牙をむいたというニュースがあった。

 表現の自由は常にあるが、他者を非難する必要はない。ただ、気持ちとしては理解できる。

 この不器用な男たちの力仕事と技術なくして、建築という実業はなりたたないのだ。

 どんなクリニックとするのか?

 ここまでに院長とは20回程の打合せを重ねたが、コンパスは同じ方向を指していると確信している。

 その成果をこの秋に収穫するつもりである。

文責:守谷 昌紀


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「住吉区歯科医師会館」‐5‐咲きほこる



 世は「平成最後」とかまびすしいですが、新元号が4月1日に発表されると知りました。

 つい先日、娘に教えて貰ったのです。



 そんな世間の喧噪とは関係なく、季節は粛々と進んで行きます。

 現場の近くの長居公園で、早咲きの桜かなと思って近づくと「アーモンド」と表記がありました。

 あのアーモンドなのでしょうか。



 工事も残すところ1ヶ月となり、職人の往来も激しくなってきました。



 来月、クライアントである歯科医師会の皆さんをお迎えする「現場内覧会」を予定しています。


 来客用ヘルメットもすでに準備済。




 壁下地の工事も進んでいますが、全て鉄製のライト・ゲージ・スタッドで構成されています。

 一般にはLGSと呼ばれるもの。



 防火性能に優れていますが、木ではないので加工が簡単ではありません。

 大工ではなく専門の職人の手で施工されるものです。

 トップライト周りの繊細な部分も、LSGで下地をしているのがみてとれます。



 1階の大会議室も随分形になってきました。



 2階の会長室は床下地を施工中。



 トップライトは転落の危険がないように養生中でした。



 「虫歯の鳥などいないのでは」というコンセプトから展開していたったのが、正面の庇です。

 「くちばし」と呼んでいますが、この繊細な部分を鉄骨で構成するのは、なかなかに難しい仕事です。




 最上部のくちばしをどう納めるか、検討している図。



 その直下にあるサッシが、丁度搬入されてきました。

 できる限り外壁と一体化させるため、最後の最後まで検討して貰った部分です。

 建物にとっての顔は、できる限り美しいものにしたいのです。



 バラ科とあったアーモンドの花は、桜に良く似ています。

 冬をやりすごし、今まさに咲き誇る瞬間です。

 日本における近代建築の祖、建築家・前川國男は弟子にこう言ったそうです。

 「自然は美しいね。なぜだと思う。自らに責任を持っているからだよ」

 またこうも言いました。

 「人間は、はかない存在である。頼れる確固たる存在が必要だ。それに建築は応える必要がある」

 建築で一番大切なものは永遠性だと言ったのです。

 この歯科医師会館も、私より長く存在してくれるはずです。永く咲きほこる建築であって欲しいと思うのです。

文責:守谷 昌紀


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末代までの誇り‐1566‐



 3月に入り、光の力強さが増したでしょうか。

 しかし今日は生憎の雨です。



 当社は南向き建物の1階にあります。

 エントランスすぐにあるのが打合せスペース。



 床も壁も白を選んでいるので、開口→床→天井→床と反射を繰り返し、光が奥まで届きます。

 その分、掃除は大変ですが、これによって昼間の明るさは全く違います。



 私の席から見た風景です。

 左奥は1月末からスタッフに加わったIさん。そして手前はオープンデスクの学生。

 その向かいが、まもなく11年目に入る田辺さんの席です。

 進行中のクライアントは皆さん承知しているのですが、彼女は臨月に入っていました。

 予定日はもう少し先だったので、この日も打合せに出てくれていました。

 ちょっと大変そうだなと思っていたら、その日の晩に入院し、翌日に無事男の子を出産したのです。

 折があった医師のクライアントからは、「ギリギリまでお仕事頑張っておられたので、少しドキドキしてました」「本当におめでとうございます」とメールを頂きました。

 プロであり、ご自身のクリニックも似た状況があったので、尚更だったようです。

 彼女には休む権利があるので、「休みたい」と言えば、勿論休んで貰うつもりでした。

 しかし、結果として生まれる直前まで働いて貰ったことになります。

 働くことが、マイナス要素となる可能性が無いとは限りませんが、望んで働いてくれるなら、そんなことが起るはずがないと信じていました。

 嫌々とか、仕方なしにでなければ、働くということは最も健全な行いだと思っています。

 将来、子供さんに「お母さんは、あなたが生まれる寸前まで働いていたのよ」と伝える機会があるかもしれません。



 梅が終われば、桜の蕾のふくらみが目につくようになりました。時間が滞ることはありません。

 137億年とも46億年とも言える、大絵巻物の最新刊あたりで私達は生かされています。

 休むこと、休ませることばかりがフォーカスされる時代ですが、全ての仕事は、自分や家族の幸せに直結しています。

 これは、いくら時代が変わっても、変わることのない真理です。

 「末代までの誇り」と言って貰えるような生き方を目指すしかありません。

 当社はいつの間にやら、私以外の全員が女性になりました。



 昨日はひな祭りでしたが、スーパーへ買い出しに行って気付いているようではどうしようもありませんが……

 時々「守谷は女性に厳しい」と言われます。

 本当は全くの逆です。女性に期待しているのです。

 と言えば、妻も多少溜飲を下げてくれるでしょうか。



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「住吉区歯科医師会館」‐4‐それでも時間は止まらない



 現場には常にシートが掛かっているので、外からみるとあまり変化はありません。



 しかし、内部は違います。

 ようやくサッシが取りつきました。



 洗面、トイレの窓はガラスルーバー窓。

 オペレーターを回すと、ガラスがブラインドのように動く窓のことです。



 また、大会議室のトップライトも取付けが終わりました。



 2階の光庭に上がるとその大きさが良く分かります。

 いずれも、まだガラスは入っていませんが、サッシというものは、建築の中でも非常に重要な部分です。

 窓はどこにでもあるので、特に意識することはないと思いますが、光と風を取り込み、水を止めるということは、実は至難の業です。

 その中で、錆びに強く、成型しやすく、軽いアルミサッシは現代建築では必須となりました。



 特に、屋根面となって雨を受けるトップライトにおいて、その価値はさらに高いのです。



 2階は3人が作業中でした。



 こちらは、会長室から中庭を見た景色。



 事務室も光庭に面しています。



 そして小会議室も。

 平面的にも、立体的にも、光庭を中心にこの建物は構成されているのです。



 2階では、監督が養生のシートを張っているところでした。



 こちらはトップライトの仕舞をしているところです。



 こちら電動ノコギリでボードを裁断しているところでした。やはり、現場は職人が沢山いて、活気があってこそです。

 しかし、ここにいる皆がおそらく皆40オーバー。48歳の私も含めてですが(笑)

 最近の現場で、20代、30代を見ることが極端に減りました。

 また、新聞にもボルトとナットが足らず、鉄骨の建物は工期が何ヶ月も遅れているという記事がでていました。

 こちらの会館では何とか確保できましたが、それでもギリギリ。

 人は足らず、物は足らず、消費税UPの駆け込み需要もあり、現場は40オーバー。

 もうコントの設定レベルですが、それでも時間が止まることはありません。

 何度も、何度もこんな場面を経験してきましたが、人生は困難克服成長ゲームです。

 ここからの2ヵ月。現場には、120%で頑張って貰わなければなりません。

文責:守谷 昌紀




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株式会社一級建築士事務所アトリエm

プロフィール

株式会社一級建築士事務所アトリエm

夢は必ず実現する、してみせる。

一級建築士  守谷 昌紀 (モリタニ マサキ) ・2013年1月6日 『匠が選ぶビフォーアフター大賞2012』空間アイデア部門賞受賞 ・雑誌は多数掲載→http://atelier-m.com/publication/ 1970年 大阪市平野区生...

株式会社一級建築士事務所アトリエmの事例

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